胃潰瘍

胃潰瘍とは

胃潰瘍胃潰瘍とは、胃の粘膜にできた傷が、胃酸などによって攻撃されて生じた病変です。 胃酸には本来、胃に取り込まれた食物のみを分解する働きがありますが、胃酸が必要以上に分泌されてしまうと、自身の胃壁(いへき)※1を傷つけてしまうことがあります。
何らかの理由で胃の一番内側にある胃粘膜に傷ができ、胃酸による障害が進行すると、傷は粘膜下層や筋層といわれる深い部分にまで達して、くぼみ状の潰瘍が形成されます。
これが胃壁の一番外側にある漿膜まで達し、胃壁に穴が開いた状態を「穿孔(せんこう)」といいます。
また、胃潰瘍とよく似た病気に十二指腸潰瘍がありますが、十二指腸の壁は胃壁より薄いため、出血や穿孔を起こしやすいと言われています。
※1 胃壁(いへき):胃を構成する粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜を合わせて胃壁(いへき)という

胃潰瘍の症状

胃潰瘍の主な症状は、腹部を中心とした痛み、不快感、違和感です。
具体的な症状としては上腹部痛がもっとも多く、背中の痛み、吐き気の他に、胃もたれや腹部の膨満感などもみられます。
また、症状の現れ方は潰瘍の状態によっても違います。潰瘍部分から出血をきたす状態になると、嘔吐物に血が混じる「吐血」がみられたり、コールタールのような黒色便が出るなど便に異常が認められたりします。
持続的に少量の出血があると、少しずつ貧血が進行することもあります。潰瘍が悪化して穿孔を起こすと、腹膜炎を発症し激しい痛みがみられます。
また、潰瘍による上腹部痛は胃の中で行われる消化にも関係しており、胃潰瘍があるときの痛みは、食後60~90分頃の空腹時や夜間などにあらわれることが多いといわれています。

胃潰瘍の原因

これまで胃潰瘍の原因には、精神的ストレスが主に考えられていましたが、近年になり原因の多くは「ヘリコバクターピロリ菌の感染によるもの」ということが分かってきました。
ピロリ菌が、幼少時より胃の中に生息し続けることで、胃の粘膜は持続的に障害され炎症を起こします。
さらに、胃酸や粘膜を保護するための粘液の分泌バランスが崩れ、胃粘膜が傷つきやすくなり、潰瘍が発症しやすい環境がつくられてしまいます。
原因として次に多いのが、非ステロイド性抗炎症薬という種類の鎮痛解熱薬などによるものです。
頭痛や関節痛などの鎮痛、解熱、体のさまざまな部位の炎症を抑えるために使用されるお薬ですが、「プロスタグランジン」と呼ばれる胃粘膜を保護する物質を抑制する働きがあるため、胃粘膜を守る力が弱まり、潰瘍ができやすくなります。
潰瘍がある方や潰瘍になったことがある方の中でも、胃酸が少なくなりやすい高齢者や、非ステロイド性抗炎症薬を処方されることがある脳卒中や心筋梗塞の患者さんは、特に注意が必要です。
その他には、香辛料やコーヒーなどの刺激物の過剰摂取や暴飲暴食などの胃に取り込まれるものが原因となるものや、ストレスや過労、胃腸炎などの細菌・ウィルス感染、遺伝的要因が原因となる場合もあります。

胃潰瘍の検査

上腹部痛などの症状から胃潰瘍などの疾患が疑われるときは、胃の内部の病変を確認し診断を確定します。具体的な検査方法として、内視鏡による内部の観察や、バリウムを飲み胃の内部をレントゲンで撮影する胃透視、血液検査などを行います。
内視鏡で胃の中を確認すると、潰瘍の活動期には出血や腫れが見られ、治癒期には潰瘍が小さくなっている様子が確認できます。
また、胃潰瘍の大きな原因とされるピロリ菌感染の有無も併せて調べる必要があります。その方法には、内視鏡検査の際、胃の組織を一部採取して感染の有無を判定するものがあります。
また内視鏡を使用しない検査としては血液・尿・便を用いるものと、尿素呼気試験(吐く息を調べる)などがあり、それぞれに長所、短所があります。

内視鏡を使用する検査法

  • 培養法

判定に一週間ほど要するため、通常はあまり使用されない

  • 鏡検法

採取した組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を確認する

  • 迅速ウレアーゼ試験

ピロリ菌が作り出すウレアーゼという酵素の有無を調べる方法 判定が早いのが特徴

内視鏡以外の検査法

  • 血清抗体および尿中抗体法

血液や尿を用いる検査で簡易ではあるが、偽陰性※2が少ないのが特徴

  • 便中抗原法

便を用いる方法、ピロリ菌が少ない場合は偽陰性を示す

  • 尿素呼気試験

呼気を用いてウレアーゼの有無を調べる方法 胃全体のピロリ菌の状態を反映でき、除菌判定に多く用いられる

※2 偽陰性:本当は陽性であるのに検査では誤って陰性と判定されること

胃潰瘍の治療法

検査によって、潰瘍の出血を起こしやすい血管や、出血を起こしている血管が確認された場合は、内視鏡を用いた止血を行います。
具体的には、電気メスで焼いて止血をする方法です。 症状が軽く、出血が確認されない場合は、胃酸の分泌を抑制するお薬を使用します。潰瘍が深く穴があいている場合や、内視鏡によって止血ができない場合は、外科手術を行うこともあります。
また、腹痛が強い場合、潰瘍が大きい、出血がみられる場合は、絶食した上での点滴治療が必要になります。貧血がみられる場合には、薬物療法や輸血などの治療が必要となることもあります。
ピロリ菌感染陽性の場合は、胃潰瘍の治療と並行して除菌治療を行うことで再発を予防することが望ましいとされています。
また胃潰瘍の治療や再発、予防のためには、生活習慣の改善も重要です。刺激物の過剰摂取や暴飲暴食など、胃の負担になるものは避けたほうがよいでしょう。

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