潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎とは潰瘍性大腸炎とは、腸に炎症を起こす病気を指す「炎症性腸疾患」(IBD:inflammatory bowel disease)のひとつで、原因がはっきりとわかっていないため、長期間の治療が必要となる慢性の病気です。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜(腸管の一番内側・表面の層)にびらん(ただれ)や潰瘍(粘膜の下の層までえぐれた状態)ができる病気で、直腸から連続的に口方向に向かって広がる性質があります。
日本では医療費助成の対象となる「指定難病」のひとつで、平成25年度末時点での患者さんの数は、医療受給者証や登録者証の交付数から、約16万6,000人で、これは人口10万人あたり約100人の割合となります。
また、男女の性差はなく、若い人から高齢の方まで発症しますが、発症年齢のピークは男性が20~24歳、女性が25~29歳となっています。 また、潰瘍性大腸炎は、いくつかの基準によって次のように分類されています。

病変の広がりによる分類

  • 直腸炎型:病変が直腸だけ
  • 左側大腸炎型:病変が直腸から下行結腸まで
  • 全大腸炎型:横行結腸より口側

病期による分類

  • 活動期:病状が悪い時期
  • 寛解期:病状が落ち着いている時期

重症度による分類

  • 軽症、中等症、重症、劇症

臨床経過による分類

  • 再燃寛解型、慢性持続型、急性劇症型、初回発作型

潰瘍性大腸炎の症状

潰瘍性大腸炎の症状潰瘍性大腸炎の主な症状は、下痢、腹痛、血便です。これらの症状は、炎症が起こっている場所や症状の強さによって現れ方が異なります。
他にも発熱や倦怠感、貧血などの全身症状がみられることもありますし、腸管以外の合併症として、皮膚や関節、眼に症状が現れることもあります。
症状は、病状が悪い時期(再燃)と病状が落ち着いている時期(寛解)を繰り返すことがこの病気の特徴でもあります。
ただし、寛解期であっても腸の炎症は続いているため、病気が進行することもあり、がんになることもあります。

潰瘍性大腸炎の原因

潰瘍性大腸炎の原因は完全には解明されていませんが、体に備わった免疫のしくみが過剰に働くことで大腸に炎症を起こすのではないかということがわかってきました。
また、次のようなことも複雑に関与していると考えられています。

  • 腸内細菌
  • 自己免疫反応の異常
  • 食生活の変化
  • 遺伝的因子

※家族内の発症が認められており、患者さんの約2割にIBDの近親者がいるという欧米の報告もある。特有の遺伝子についての研究が世界中で続けられている。

潰瘍性大腸炎の検査

問診など診察に加え、次のような検査による客観的な情報から病気の状態を判断します。

血液検査

  • 炎症の状態、出血や炎症による貧血、炎症のための栄養吸収低下による栄養状態、薬剤の副作用や効果の確認などを反映する検査項目を行う
  • 定期的に実施することで早期に変化を知ることができる

便検査

  • 炎症によるわずかな出血を調べる「便潜血検査」
  • 再燃に関与することが多い病原性の細菌の有無を調べる「便培養検査」
  • 便中の炎症の量から大腸の炎症を判断する「便中カルプロテクチン検査」

下部消化管内視鏡検査

  • 大腸の粘膜を直接観察することができるため、炎症の程度や範囲から重症度を判断することができる
  • 似たような症状がみられる別の大腸の病気を区別することができる
  • 定期的に行うことで、粘膜の炎症の状態を確認し、治療効果について判断することができる
  • 検査中に組織を採取すること(生検)を行い、採取した組織は顕微鏡で詳しく調べる

CT検査

  • 腹痛、下痢、血便が重症の場合、他の腹部の病気と区別したり、腸管の合併症を確認するために行うことがある
  • 重症の場合内視鏡検査が困難なケースで行うことがある

カプセル内視鏡検査

  • 小型カメラ搭載の小さなカプセルを飲み込み、電波を利用して腸管の内側を連続撮影する
  • 下部消化管内視鏡検査が困難なケースで保険適用となる
  • 検査前に加え、検査後も下剤服用となる

潰瘍性大腸炎の治療方法

潰瘍性大腸炎の治療方法は病気の状態によって異なります。
軽症、中等症例では内科的治療が基本、重症例や全身障害を伴う中等症例では入院治療、脱水、電解質、貧血、栄養障害対策などを行います。
内科的治療で改善されない場合や症状が悪化する場合には、外科的治療も検討します。予後不良となる劇症例では、短期間で手術が必要となるか否かを判断します。

内科的治療:薬物療法、大腸粘膜の炎症を抑え、症状をコントロールすることが目的

5-アミノサリチル酸薬(5-ASA)製薬

  • 軽症~中等症に有効、炎症を抑えることで、腹痛、下痢、下血症状がかなりよくなる
  • 再燃予防にも効果がある

副腎皮質ステロイド薬

  • 中等症~重症に使用される、炎症を抑える効果が高いが再燃防止効果はない

血球成分除去療法

  • ステロイド薬が効かない活動期の患者さんに使用される

免疫調節薬または抑制薬

  • ステロイド薬を止めると悪化する患者に有効、ステロイド薬が効かなかった患者さんに使用される

抗TNFα受容体拮抗薬

  • 有効性が高く、安定した状態を維持することができる点滴または皮下注射薬

外科的治療:次のようなケースで選択される、大腸を全て取り除く手術

  • 内科治療が無効な場合(特に重症例)
  • 副作用などで内科治療が行えない
  • 大量の出血
  • 穿孔(大腸に穴があくこと)
  • 癌またはその疑い
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