クローン病

クローン病とは

クローン病とはクローン病とは、腸に炎症を起こす病気を指す「炎症性腸疾患」(IBD:inflammatory bowel disease)のひとつで、原因がはっきりとわかっていないため、長期間の治療が必要となる慢性の病気です。
炎症部位が大腸粘膜に限られる潰瘍性大腸炎とは異なり、クローン病は口から肛門までの消化管全てにびらん(ただれ)や潰瘍(粘膜の下の層までえぐれた状態)ができる可能性があります。
特に小腸と大腸での発生が多くなりますが、病変は連続せず正常な組織が間に存在するのが特徴です。
また、病変は粘膜だけにとどまらず消化管の壁全体に起こったり、腸の内側の内腔が狭められる「腸管狭窄」や他の臓器や体の外側との細い通り道ができてしまう「瘻孔」を起こしたりします。
日本では医療費助成の対象となる「指定難病」になっており、平成25年度末時点での患者さんの数は、医療受給者証や登録者証の交付数から、約3万9,000人で、これは人口10万人あたり約27人の割合となります。
また、男女比では2:1で男性、10歳代~20歳代に多くみられ、発症年齢のピークは男性が20~24歳、女性が15~19歳となっています。
また、クローン病は炎症などの病変がある範囲によって次のように分類されています。

  • 小腸型:病変が小腸に限られる
  • 大腸型:病変が大腸に限られる
  • 小腸・大腸型:小腸と大腸に病変がある
  • 特殊型:上記に当てはまらない、稀な部位に病変がある (多発アフタ型、直腸型、盲腸虫垂限局型、胃十二指腸型など)

クローン病の症状

クローン病の主な症状は下痢や腹痛です。発熱や倦怠感、下血、貧血、腹部腫瘤、体重減少などもよくみられますが、こうした症状は、炎症を起こしている部位によって異なることもあります。
クローン病に特徴的な症状として多くみられるのが、肛門部症状です。
消化管の慢性的な炎症によって、肛門周囲膿瘍や痔瘻(穴を伴う痔のこと)となり、肛門に痛みや膿がでることがあります。
患者さんのなかには、腹痛や下痢がなく、長く続く発熱や肛門部症状で受診し、クローン病が判明する方もいます。
前述の合併症(瘻孔、腸管狭窄、膿瘍など)により、腹痛や下痢、腹部膨満管や吐き気などを引き起こすこともあります。また、腸管以外の合併症として関節炎、虹彩炎、皮膚症状などがみられます。
症状は、病状が悪い時期(再燃)と病状が落ち着いている時期(寛解)を繰り返すことがこの病気の特徴でもあります。
ただし、寛解期であっても腸の炎症は続いているため病気が進行することもあり、がんになることもあります。

クローン病の原因

クローン病の原因は完全には解明されていませんが、近年の研究成果によって一部明らかになってきたのは、体に備わった免疫のしくみが過剰に働くことで炎症を引き起こすのではないかということ考え方です。
場合によっては、さらに次のようなこととも複雑に関与しているのではないかと考えられています。

  • 遺伝的因子:家庭内発症や人種や地域差があることから、遺伝的要素が背景にあると考えられている。クローン病を引き起こす可能性のある遺伝子がいくつか挙げられていて、単一ではなく複合して関与していると考えられている。
  • 小腸・大腸型:小腸と大腸に病変がある
  • 環境因子:腸内細菌、高脂肪食、過剰な清潔、感染など

クローン病の検査

問診など診察に加え、次のような検査による客観的な情報から病気の状態を判断します。

血液検査

炎症の状態、出血や炎症による貧血、炎症のための栄養吸収低下による栄養状態、薬剤の副作用や効果の確認などが目的で、定期的に実施することで早期に変化を知ることができる。

下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ検査)

大腸と小腸の終わり部分(終末回腸)に病変がみられることが多いため、直接観察する。定期的に行うことで、粘膜の炎症の状態を確認し、治療効果について判断することができる。
寛解期とみえる場合でも炎症が残るケースが多く、再燃の原因となることを避けることができる。
検査中に組織を採取し(生検)、顕微鏡で詳しく調べることもある。


小腸内視鏡検査

近年行われるようになった、大腸内視鏡では観察できなかった小腸の直接観察が可能。
バルーンが備わったチューブを用いるため、検査時に腸管狭窄を拡張する処置が行える。

カプセル内視鏡検査

小型カメラ搭載の小さなカプセルを飲み込み、電波を利用して腸管の内側を連続撮影する。
一般的な内視鏡検査に比べ、検査時の患者さんの体への負担は少ない。
以前は腸管狭窄によってカプセルが留まる可能性があることからクローン病では使用できなかったが、ダミーのカプセルを先に飲んで途中停滞しないことを確認した上で検査実施できるようになった。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)

クローン病ではまれだが、胃や十二指腸に病変がないかを観察する。

消化管造影検査

小腸や大腸の粘膜にバリウムを付着させて通過する様子をレントゲン撮影する検査、粘膜の凹凸から潰瘍や炎症を確認できる。
全体像が把握できるため、形態や狭窄、癒着を確認することができる

CT検査、MRI検査

患者さんの体への負担が少ない。
医療機器の解像度が高くなり、造影検査波の結果を得られるようになった。消化管以外の臓器や組織の膿瘍や瘻孔、腸管であれば粘膜より外側の壁の炎症などの様子を評価することができる。
MRIは瘻孔、肛門部病変に対して優れている、被曝が無いため繰り返しの検査にも有用

クローン病の治療方法

クローン病の治療目的は、炎症を抑え、現れている症状を鎮めてコントロールし、寛解状態を目指しその状態を長期にわたって継続しQOLを高めることで、同時に栄養状態の改善も図っていくことです。
治療方法としては内科的治療として栄養療法・食事療法、薬物療法が主体となりますが、腸閉塞や穿孔、膿瘍などを合併している場合、内科的治療で効果が乏しい場合には外科的治療が必要となります。
患者さんの状態や病気の活動性、ライフスタイルなども考慮の上で治療方法が選択されます。

栄養療法・食事療法

  • 栄養療法・食事療法脂肪を制限した栄養剤を摂取することで、腸管の負担や刺激を軽減する。
  • 腸管の病変、腹痛や下痢などの症状の改善させる。
  • ※症状や活動性が落ち着いている際の通常の食事においても、病気を悪化させないために、 一般に低脂肪食に加え、消化しにくい食物繊維をあまり含まない食事が勧められる

薬物療法

  • 薬物療法5-アミノサリチル酸薬(5-ASA)製薬は、軽症~中等症の第一選択で、副作用が少ない。他の薬剤と併用することもある。
  • 副腎皮質ステロイド薬は、中等症~重症に使用され、炎症を抑える効果が高いが再燃防止効果はない。長期投与による副作用が問題となるため、再燃の場合は別の治療薬を使用する。
  • 免疫調節薬または抑制薬は、お薬の効果が出るまで1~3か月かかる。ステロイド依存のケースでのステロイド減量効果、寛解維持、手術後の再燃予防に有用。
  • 抗TNFα受容体拮抗薬は、有効性が高く、安定した状態を維持することができ、再燃予防効果があるが、副作用に注意が必要。
  • 血球成分除去療法は、血液から特定の成分を取り除き、また戻す治療方法。ステロイド薬が効かない活動期の患者さんに使用される

外科的治療(手術)

外科的治療(手術)腸管の炎症に対してはその腸管部分のみを切除する、または、狭窄部分を広げる手術が選択されます。そのほか、肛門部病変がある場合にも手術が行われることがある。

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