肛門外科とは
肛門外科は、医師にとっても「難しい」とされる分野です。多くの患者様がお困りであるにもかかわらず、適切な治療を受けられていない方が多いのが現状です。
当院では、そうした患者様のQOL(生活の質)向上のために、肛門外科が非常に重要な分野であると考えております。当院の医師は、消化器疾患を専門とする経験豊富な医師が担当し、皆様のお悩みに真摯に向き合います。
対応可能な症状
当院の肛門外科では、以下のような肛門に関する様々な症状に対応しております。
- 肛門からの出血
- 肛門の痛み全般
- かゆみ
- 腫れ
- 肛門周囲のしこり
- 性病(尖圭コンジローマ、肛門ヘルペス、梅毒など)も肛門周囲に現れることがあり、診察対象となる場合があります。
これらの症状でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
「肛門内科」と
「肛門外科」の違い
「肛門内科」という言葉を耳にされる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実は医師の間ではあまり一般的な区分ではありません。
多くの場合、患者様が受診しやすくなるよう、患者様を集めるために用いられる言葉であり、消化器内科のような明確な専門分野として確立されているわけではありません。
肛門の疾患には外科的処置が必要となるケースも多いため、専門的な診断と治療が可能な肛門外科医にご相談いただくことが大切です。
3大痔疾患について
痔には大きく分けて3つの種類があります。
- 核(いぼ痔):静脈層に血液がたまり膨らんでこぶ状になった状態。内痔核と外痔核がある。
- 肛(切れ痔):硬い便によって肛門上皮が裂けた状態。
- 痔瘻(あな痔):肛門小窩からの細菌感染が原因で膿が出る。
こ痔にはこれらの疾患が約80%を占めます。その他には直腸脱、肛門周囲炎、尖圭コンジロームなどの疾患があります。
痔核(いぼ痔)に
対する治療方針
ここでは主に内痔核の治療方針を説明します。内痔核は、その大きさや脱出の程度によってⅠ度からⅣ度までの分類(Goligher分類)があります。
- Ⅰ度:排便時に痔核は膨隆するが肛門外に脱出はしない
- Ⅱ度:排便時に痔核が脱出するが排便後に元に戻る
- Ⅲ度:排便時に痔核が脱出し、手で押し込まないと戻らない
- Ⅳ度:常に痔核が脱出した状態
当院では、患者様の症状と痔核の進行度に応じた最適な治療をご提案いたします。
- Ⅰ度の痔核:主に保存的治療をおすすめします。食事療法や薬物療法を行います。食事療法は果物・食物繊維の摂取と、便通をよくしていきみを避けることが基本です。 痛みや出血などの症状を伴う場合は入浴など温める温浴療法もおすすめです。またアルコール摂取や刺激物を避けることも重要です。薬物療法が必要な場合は軟膏や内服薬なの薬物にて治療を行います。
- Ⅱ度の痔核:食事療法や薬物療法で治療を試みますが、繰り返す痔核の場合は注射(ALTA療法)による治療を適用します。これは、痔核に薬剤を注入することで痔核を硬化させ、脱出や出血などの症状を改善させる方法です。
- Ⅲ度の痔核:主に注射(ALTA療法)による治療を適用します。場合によっては結紮切除などの手術が必要になる場合もあり、状況に応じて適切な医療機関へのご紹介も行っております。
- Ⅳ度の痔核:状態によっては注射(ALTA療法)が適応になる場合もありますが、基本的に手術が治療方針となります。手術には結紮切除などがあり、これらの重度な痔核に対する手術は、より専門的な設備や時間を要し、出血のリスクもあるため、入院での治療が必要になる場合もあります。当院では状況に応じて適切な医療機関へのご紹介も行っております。
治療は、飲み薬や塗り薬が中心となる場合もありますが、症状を繰り返したり痛みが強い場合には、注射や手術が検討されます。治療の適用は個々の診察結果によって異なります。
切れ痔に
対する治療方針
切れ痔は、症状が慢性化すると肛門が狭くなることが多く、切れては治るを繰り返すことで悪化する傾向があります。
当院では、ほとんどの場合、麻酔をかけた上で肛門をしっかりストレッチ(拡張)し、患部にジオン注射を行うことで治療します。これにより、狭くなった肛門を広げ、炎症を抑え、症状の改善を図ります。肛門括約筋を切開する手術も存在しますが、括約筋への影響を考慮し、最近では重度のケースを除いてあまり行われません。
痔ろうに対する治療方針
痔ろうの治療は、基本的に手術となります。
痔ろうの患者様は、多くの場合、炎症を伴っていることが多いため、手術前に内視鏡検査を行い、炎症の状態や他の疾患(例えば癌など)の有無を詳細に確認します。
もし他の疾患がある場合や炎症が非常に強い場合は、手術によって症状が悪化する可能性があるため、原則として手術を行わないことがあります。
理想的には、炎症が完全に落ち着いた状態で手術を行う方が、よりきれいに治療でき、再発のリスクも低減できるとされています。また、痔ろうが筋肉の奥深くに及んでいるケースや、他の疾患の可能性も考慮し、手術前にはCTやMRIなどの画像評価を行うことが非常に重要です。
当院で行える
日帰り手術について
当院では、患者様への負担を軽減するため、以下のような日帰り手術に対応しております。
- ジオン注射(ALTA療法)
- 血栓性外痔核(血豆)の除去
- 肛門ポリープの切除
上記の治療に対応しておりますが、痔の状態により出血リスクが高いと判断された場合は、入院可能な病院を紹介させて頂く事もあります。
また当院では大腸内視鏡検査も実施しており、検査をきっかけに肛門の症状についてご相談いただく患者様も多くいらっしゃいます。
痔の症状の1つに出血がありますが、痔のせいだと思い込んでいたが、実は大腸ポリープや大腸がんだった、という事もあります。
出血などがあった場合は、大腸内視鏡検査を行うことは非常に重要です。大腸内視鏡検査の際に痔の状態も詳細に観察しやすいので、痔の治療方針を決定する事にも役立ちます。
ALTA療法について ~切らずに治す痔の手術~
ALTA治療とは、内痔核四段階硬化療法といい内痔核周囲に直接硬化剤を注射し、血管に炎症を起こさせ痔を硬化縮小していく治療法です。注射の前に仙骨硬膜外麻酔や肛門周囲に局所麻酔を行います。この麻酔時の注射で最初に痛みを感じることはありますが、内痔核周囲に硬化剤を注入する際は、粘膜下層という痛みを感じにくい部位に注射をしますので、通常は痛みを感じません。また治療自体の時間は5~10分程度で非常にスピーディな治療です。もちろん事前の麻酔方法によっては1~2時間ほど安静にしていただく必要があります。
従来痔の手術は入院が必要になることが多かったですが、この治療は日帰りでも手術ができることが大きなメリットで、仕事などでお忙しい方やなかなかまとまった休みをとれない方には特におすすめの治療法です。
ALTA治療は、妊娠している方やその可能性のある方、授乳中の方、透析療法を受けている方などは受けられませんのでご了承ください。また副作用として直腸潰瘍や麻酔薬のアレルギーなどの可能性があります。
受診を希望する方へ
肛門の症状はデリケートな問題であり、受診に抵抗を感じる方も少なくありません。しかし、症状を放置すると悪化し、日帰り手術での対応が難しくなるケースもございます。また、肛門の症状の裏に、痔とは異なる別の病気、特に癌が隠れている可能性もございます。
そのため、どんな些細な症状でも、まずは一度お早めに受診し、専門医による診断を受けることを強くお勧めいたします。早期の検査・治療は、患者様の負担を軽減し、より良い結果につながります。どうぞお気軽にご相談ください。